ベトナムオフショア指南
- 「外資」という存在 -
対等な関係を維持し、互いの利点を利用し合おう
Update 09.09.24そうしたなか、近年、複数の日系企業において違法ストライキが発生しました。これは、企業内労組主導というより、外部の手数料目当ての扇動者によるものだといわれています。対象となった日本企業はおしなべて、「大企業」と言われる企業で、雇用契約をきっちり交わしていたそうですが、それでも思わぬ事態が発生したということです。日本企業には「言いやすい、会社が応えてくれる」雰囲気があるからターゲットになったという指摘も耳にします。当局への要請で、事態は沈静化し日越双方の企業・行政関係者間で労使協調の確立に向けた協議も行われ、無事解決されたようです。
雇用契約を結んでいなければ、事態は悪化の一途をたどったことでしょう。
従業員と正規の雇用契約を結ぶという、日本では当たり前のこと。これをベトナムでも、ベトナムの法律に基づいて当たり前に行えばよいのです。このことを、しっかりとふまえた上で、現地人採用→労務管理について取り組みましょう。怠ると、後々に手痛い損失を招くばかりか、「日本資本」への不信感を招きかねません。
双方が自分にない利点を活用し合い、互いの発展を目指すのが、外資が参入したビジネスの本当の姿であると、私は思っています。
たとえ技術的に、日本のほうが指導する側にあっても、雇用という面においては契約を交わし、対等であるべきです。当社は、当初から、現地スタッフを採用する際には、ベトナムの労働法をよく勉強し、書面で制度にのっとった雇用契約を交わしてきました。これは、リスクマネジメントであると同時に、ベトナムに限らず、人材を活用して事業運用する際の、ビジネス上の常識あると考えるからです。
勝手の違う土地で人材を採用する場合、煩雑さからも、ともすると雇用契約を後回しにしがちです。対等な立場で、継続的に日越を懸け橋としたビジネスを成功させていくためにも、心して取り組みたいことの一つです。
日本資本…磐石な体制への信頼感
Update 09.09.18ベトナムに進出して事業展開する目的は「ベトナムの人材を活用して、より一層の価格競争力を高める」というものです。ただこれは、日本側からの視点。ベトナム側からすると、どうでしょう。
簡単なことです。進出してきた日本企業を利用して、どうしたら自分たちが豊かになれるか、という視点で我々を見ています。
ここで人材採用という点にフォーカスしましょう。私たちは、「手先が器用で、まじめにこつこつと働く人材を安く雇用し、低コストで売り上げを図りたい」と考えます。
一方のベトナム側はどうかというと、日本資本の「しっかりした」企業で安定雇用され、ベトナムの水準よりも高い給料を得たいと考えるわけです。
大切なことは、先進国である私たちは、ベトナムの企業よりも当然「しっかりしている」と見られている点です。「高水準の給与体系」はもちろんのこと、ここには万全の雇用体制が保証されることへの期待もこめられているのです。
しかし、日本企業のなかには、ベトナム人スタッフとは雇用契約を結ばないまま事業活動を行っているケースがあると聞きます。
これは、あってはならないことです。日本でも雇用管理は、法律に照らし合わせたうえできちんとした契約に基づくのが当たり前です。ベトナムだから、それを怠ってもいいというわけではありません。
これは、道義的な面からのみ言っているわけではありません。雇用契約を結ばなかった場合の、一番のリスクとして挙げられるのが社会将兵労働省(日本の労働基準監督署にあたる)に訴えられること。ベトナムでは、雇用に関する法律に違反した場合、内資企業よりも外資企業のほうが厳しくペナルティが課されます。法律に準じた事業活動を行ってこなかった企業に救済の余地はないと考えたほうがよいでしょう。
2番目に考えられるリスクがストライキです。ベトナムは共産主義国家であることからも、労働者の立場が尊重されてきました。また、国営企業がほとんどであった時代は、労組の側に「お上にもの申す」ことに抵抗があったという話も聞きます。
- 現地監査法人による、ずさんな税務申告 -
応急措置で対応したものの
Update 09.09.03定款外の業務は、直接的なIT開発ではないので、免税対象にならず、利益には当然課税されます。しかし、この現地監査法人は、課税の対象となる定款外の業務のコストをきちんと拾い上げずに手を抜いたのです。課税の対象となる業務の利益分の額を、ご丁寧にも多く算出してくれたわけです。
いくらなんでも、利益率が99.3%はおかしいと気づくはず。あまりにクライアントが多すぎて途中で面倒になってしまったのでしょうか。でも、こちらはたまったものではありません。
そこで、監査法人に頼らず、コストの仕訳を社内で行い、そのデータを監査法人に送りました。結局、監査法人から監査法人としてのサービスを受けることができませんでした。監査法人のサイン以外は、自ら作業したことになります。
次回…現地監査法人による申告業務、そのあ然とする結末!
コストがたった0.7%のサービス!
Update 09.09.01ベトナムで事業をするうえで避けて通れないのが、税務申告です。
ベトナムでは、定款に定めた業務と、それ以外の業務を分けて、売上、コスト、利益等を申告書に記載します。
以前当社は、ある現地監査法人で税務申告を依頼しました。完成した申告書に目を通したところ、定款に定めた業務(IT開発)にはコスト(経費)を64%計上してあるのですが、定款以外の業務(人材派遣)の売上に対してなんと0.7%しかコストを計上していないことがわかりました。つまり、売上がそのまま収益になっているのです。
この監査法人の行った税務処理を仮の数値で説明すると以下の表のようになります。
| 項目 | 金額 | |
| ①定款で定めたサービスの売り上げ | 25,000,000 | a |
| コスト | 16,000,000(売上の64%) | b |
| 利益 | 9,000,000 | a-b |
| ②定款に定めていないサービスの売上 | 4,000,000 | c |
| コスト | 32,000(売上の0.7%) | d |
| 利益 | 3,968,000 | c-d |
当社の定款業務の売上が2,500万円、コストが1,600万円。実際に課税される額はこの差額である900万円です。ただ、ベトナムでは現在免税制度があり、当社のメインの業務内容であるIT開発はその対象となっているので、事実上税金が0となります。
※現在のベトナムの企業所得法ではIT事業を行う事業体は、当初4年間税金が免除になる。
- オフショア≠外注・請負 -
ベトナム人材の能力底上げを図るのも日本の役割
Update 09.08.26日本⇔ベトナムのオフショアは、かなり順調に発展しているという印象を各種情報ソースからは受けます。ところが、実態はまだまだ多くの問題があるようです。比較的シンプルな業務である「データ入力の域を出ない分野でしか、安心して発注できない」という声は、あちこちで聞かれ、IT分野での開発案件やシステム構築などのプロジェクト系の業務を任せて、期待通りであったという話はあまり聞かれません。
当社では発足当時も今も「現地業者に再委託」という方式をとったことは一度もありません。自社で完全にコントロールできる環境でないと、日本人の満足に見当った成果品を仕上げるのは困難と考えているからです。
これは、当たり前のことで、日本の生産の仕方を実際に知らない人が日本の生産レベルのものを生産できるはずはありません。日本人がまず、実務を通してベトナム人に見本を示して、彼らの能力を上げていく必要があると思います。
当社ではそのため、現地で採用したエンジニアを日本の職場環境で実務研修させ、日本の生産の仕方を実践的に学ぶ機会を設けています。日本語に関しては、来日前に特訓を施し日本語検定2級までレベルアップ。来日後は、仕事で使う言葉やセンテンスを実際に仕事で使いながら覚えていってもらいます。
また、日本語通訳者にも業務訓練を施し、仕事に関係する言葉に慣れてもらいます。作業内容をより的確なベトナム語に訳せるようにするためです。
日本の企業が活用したくなるような、日本語に通じるエンジニアの育成が目下の課題です。
仕事に対する認識におけるギャップ
Update 09.08.24私が日本工営に在籍していたとき、海外での建設コンサルタント業務において、調査や設計などの作業を現地業者に発注した経験が何度かあります。しかし、私の経験では、現地業者に発注した業務が期待通りに納品されたケースがあまりありません。現地業者は、こちらが仕事を頼めば、「わかりました。十分に出来ます」といって気安く請け負ってくれます。発注する方は、これくらいの作業なら大丈夫だろう、相手もできると言っているのだし…と考えます。しかし、この安易な判断がとんでもない結果を招くことがあるのです。
たとえば納期が今月の10日だったとして、当日になって、さあ仕上がった成果品が受け取れるかと思うとさにあらず。現地業者は涼しい顔で「できませんでした」と言ってきます。そして、予定したスタッフが集まらなかった、パソコンが急に使えなくなった、スタッフが病気になって…等々、日本でなら到底通用しないような言い訳を、当たり前のように並べ立てるのです。日本の業者なら、徹夜をしてでも仕上げます。あるいは、ある程度作業が進んだ段階で見通しを発注側に中間報告したり、難航しそうな場合は納期の延長を持ちかけたりと、なんらかのアクションを起こすでしょう。しかし、そうした日本の「常識」が通じないのが、外国での事実です。
どの国のどの業者もそうだとはいいません。しかし、商慣習は、日本とかなり違います。日本人のような仕事に対する責任感を、どの国の業者にも期待できるわけではありません。
ただ、現地の業者が一方的に悪いわけではありません。そうした事情をふまえたうえで、むしろ発注する側の意識を変える必要があるということを言いたいのです。日本での期待値を暗黙の了解で求めるのではなく、精度の高い成果品を納期どおりに納めるには、何をいつまでにどうすべきか、問題が生じたらどう対処すべきかを詳細に、丁寧に相手に文書で伝える。こうした姿勢が、商慣習上のギャップを埋める唯一の手段です。
- ベトナム人の「能力」と「特性」について -
目まぐるしいスピードで変化する若いベトナム人気質
Update 09.07.29進出する国において人材を採用するときには、その人材を事業でどのように活用するかという課題に面します。
日本では、ベトナム人は器用でもの覚えが早く、概して算数が得意…久しくそう言われ、共通認識として浸透しています。しかし、それはひと昔前のステレオタイプといえます。
なぜなら外国企業が先を争って進出するベトナムでは、経済が急速に発展しています。 2006年に発効された共通投資法と統一企業法には、外資・内資問わず全ての法人組織の他社への出資や株式の購入が無制限にできることが盛り込まれ、外資進出に大きく拍車をかけました。とくに2007年から2008年にかけてのFDI(海外直接投資)の額は飛躍的に伸びました。
これに伴って進出した外資企業で多くの雇用が創出されました。条件のよい就業先の選択肢が増えたのです。ここで浮上してきたのが、ジョブホッピングという問題です。ジョブホッピングとは、一旦就業しても、ほかに、さらに有利な条件の職場があれば、すぐさまそちらに移ってしまうという現象です。
ドイモイ以後、堅調に経済成長を続けてきた時代には、一度採用されたら、その会社に軸足を据えて一生懸命働こうと考えるベトナム人従業員が大半でした。それがFDIの飛躍的増加により雇用機会が増加したことで、若いベトナム人の気質は変わりました。今朝面接した人材が、夕方には、他の就業先を見つけて退職願いを出してきたこともあると聞きます。極端な賃上げ要求をしてきて、それがかなわなかったら即退職してしまった例もあるそうです。「新人類」が登場したのです。
2008年後半の世界経済危機のあおりを受け、こうした動きもいったんは鎮静化しました。とはいえ2009年6月の時点で、08年のFDI認可額は117億ドルと発表されています。外資進出は、今後も引き続き進むでしょう。
頭がよく器用、というベトナム人の本質は変わりません。しかし「離職率が低い」「企業への忠誠心が高い」という評価は、すでに当てはまらないと言ってよいかもしれません。
貪欲にCAD技術を身につけたベトナム人学生
Update 09.07.17オフショア事業を立ち上げたときに驚いたことの一つが、ベトナム人スタッフのCAD技術力の高さです。建築学部を卒業したスタッフでしたが、日本人の学生とは比べものにならないほど操作能力に優れていました。
意外と思われるかもしれませんが、発展途上国と言われる国々の社会状況を俯瞰してみると、その理由が浮かび上がってきます。
当時のベトナムの経済は、今よりもさらに大きく立ち遅れていました。TVのチャンネルは少なく、雑誌もマンガも、本屋にはほんの数種類のみ。ウィンドウショッピングをしようにも、店には選ぶほどの商品が置いていない…そのような状態でした。当時のベトナムの若者には、日本の若者のような余暇の楽しみ方はありませんでした。
そのような状況ですから、建築学部の大学生にとっては、大学にあるPCを使ってCADの操作を覚えることが何よりの楽しみだったわけです。言い換えると、学生たちは余暇の時間を貪欲にCADの操作を学ぶことに費やしたのです。
そうした学生たちが、当社に多く集まりました。高度なCADの操作力を備え、若く、自己啓発力が高い労働意欲に燃える人材でした。




